住宅ローンはAPRで比較するのが良いというのは本当?APRとは何者?
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- 親カテゴリ: 住宅ローンの基礎知識
- カテゴリ: 住宅ローンの計算方法と相場
- 作者: 住宅ローン比較
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住宅ローンはAPRで比較するのが良いというのは本当?APRとは何者?
住宅ローンを比較する際に「APR(エーピーアール)で比較した方が良い」ということを聞いたことがある方もいるかと思います。
しかし、APR(エーピーアール)って一体何者なのでしょうか?本当にAPR(エーピーアール)で比較するべきものなのでしょうか?
APR(エーピーアール)とは
APR(エーピーアール) = Annual Percentage Rate の略で実質コストとも訳すことが可能です。
APRを恐ろしくシンプルに解説すると
借入額+利息+事務手数料+保証料+団信料を加えた住宅ローンに関連するすべてのコストを意味する指標
ということになっています。
というか多くのサイトではAPR(エーピーアール)の概要は説明されていますが、それが何者なのかは一切ふれておらず、APR(エーピーアール)の数値も出されていますが、どうやって計算したのかの説明もないのがほとんどなのです。
なのに上記のような説明だけで
「そっか、じゃあAPR(エーピーアール)が一番低い住宅ローンにしよう。」
なんて納得する人なんていないのではないでしょうか?
APR(エーピーアール)というのはIRR(内部収益率)という投資家向けの指標
実はAPR(エーピーアール)というのは、古くからある考え方で投資家などが投資判断に利用するIRR(内部収益率)のことを意味しているのです。
IRR(内部収益率)を説明するために例を出すと
投資案件 | 初期投資 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 4年目トータル |
---|---|---|---|---|---|---|
「A」 | -100 | 20 | 20 | 20 | 52 | 112 |
「B」 | -100 | 3 | 3 | 3 | 103 | 112 |
となっています。
- 投資案件「A」は初回に100万円払ったら、1年目に20万円、2年目に20万円、3年目に20万円、4年目に52万円をもらえて合計で112万円で12万円プラスになる投資案件。
- 投資案件「B」は初回に100万円払ったら、1年目に3万円、2年目に3万円、3年目に3万円、4年目に103万円をもらえて合計で112万円で12万円プラスになる投資案件。
どっちも、4年目間トータルでのプラスは12万円、利回りでいえば4年間で12%という投資案件なのですが、あなたならどっちがお得になると思いますか?
答えは投資案件「A」なのです。
なぜなら、はじめに多くお金を持っていれば、それを定期預金にでも預ければ多少は投資案件「B」よりも増えることになるからです。
お金は早く受け取れるものの方が投資判断としては有利ということになるのです。
このお金が持つ時間的価値を算出するのがIRR(内部収益率)なのです。
IRR(内部収益率)を上記の例で計算してみると
- 投資案件「A」:3.98%
- 投資案件「B」:3.00%
つまり、投資案件「A」が投資すべき投資案件と判断するのです。
計算式を理解する必要はありませんが、一応載せておきます。
「それと住宅ローンがどんな関係があるの?」
住宅ローンというのも、銀行の立場に立ってみると投資案件なのです。
銀行からすれば、住宅ローンは不動産という住宅を担保にしてお金を貸して、利息を払ってもらう投資案件なのです。
私たち住宅ローン利用者が投資案件ということになります。
投資を判断する基準に使われるIRR(内部収益率)が低い
= 銀行から見て投資効率の悪い投資案件
= 住宅ローンの利用者に有利な投資案件(返済ふたんが少ない投資案件)
ということになるのです。
投資かから見て投資を判断するときにはIRR(内部収益率)の高いものが良い
ことになるのですが
投資される側から見て、利用者に有利になることを判断するにはIRR(内部収益率)の低いものが良い
ということになるのです。
IRR(内部収益率) = APR(エーピーアール)ですので
APR(エーピーアール)の低い住宅ローンが利用者にとって有利な(返済負担の少ない)住宅ローン
であると言えるのです。
実際に住宅ローンで計算してみると
2015年1月時点でのAPR(エーピーアール)の低い住宅ローンは
イオン銀行
3000万円借入
35年ローン
金利0.570%(変動金利)
諸費用:事務手数料648000円+保証料0円
APR → 0.699%
ソニー銀行
3000万円借入
35年ローン
金利0.589%(変動金利)
諸費用:事務手数料648000円+保証料0円
APR → 0.718%
住信SBIネット銀行
3000万円借入
35年ローン
金利0.589%(変動金利)
諸費用:事務手数料648000円+保証料0円
APR → 0.779%
三菱UFJ銀行(みずほ銀行、三井住友銀行も変動金利は同じ条件)
3000万円借入
35年ローン
金利0.975%(変動金利)
諸費用:事務手数料32400円+保証料金利+0.2%
APR → 1.181%
となっています。いかがでしょうか?
ほとんど、当サイトのランキング順位と違いはありません。
一つ違うのは住信SBIネット銀行の順位が当サイトの場合は2位になっておりますが、これは金利や返済額ではない疾病保障無料などの特典を重視してのものなのです。
当然、上記は変動金利の例ですが、当初10年固定金利でも、全期間固定金利でも計算が可能です。
フラット35の返済プラン比較シミュレーションというサイトで試算可能です。
試算結果の下部に「APR」を表示するというボタンがあるので条件入力後ボタンをクリックしましょう。
http://www.simulation.jhf.go.jp/type/simulation/hikaku/openPage.do
結局、APR(エーピーアール)で住宅ローンを比較する方が良いの?
否定はしませんが、おすすめはしません。
なぜなら、内部収益率なんていうのは、投資家か証券会社などの金融機関に努めている方しかほとんど縁のない指標であり、ピンとこないからです。
「総返済額で比較する」方が、諸費用も、団信料も、金利の増減も踏まえて、比較するので理解しやすいからです。
結果として、上記の通りでAPR(エーピーアール)で比較しても、総返済額で比較しても、結果は大きく変わりません。
さらに最近では住宅ローンは疾病保障無料付帯、介護保障無料付帯、割引、家事代行・・・などの付加価値サービスも増えてきているため、それも踏まえて比較検討する必要があるのです。
住宅ローンは大きな買い物ですから、自分が理解できない指標で比較することほど恐ろしいことはありません。一つの誤解や認識違いで大きな損をしてしまう可能性もあるからです。