10年固定金利にだまされるな
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- 作者: 住宅ローン比較
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10年固定金利にだまされるな。変動金利と比較
2012年12月に入り、消費増税前の駆け込み需要もあってか、各銀行とも金利を引き下げてきています。さらに、大きな傾向として変動金利押しだった銀行が10年固定、5年固定、3年固定と短期固定金利型押しに変わってきています。では実際に短期固定金利は、本当にお得なのでしょうか?
変動金利と10年当初固定金利の違い
変動金利とは、返済までの間、通期にわたって基準金利からの下げ幅が同じ金利タイプになります。住信SBIネット銀行の場合であれば、2012年12月時点の基準金利2.775%から引き下げ-1.91%が適用されて0.865%が適用金利になります。この変動金利は年2回の金利見直しが行われ、そのときの基準金利からいつも-1.91%引き下げられることになります。この基準金利は、銀行が企業に対して1年以上の融資をする際の金利、つまり長期プライムレートと連動します。簡単にいえば、景気が良くなって融資や一般の預金の金利があがると、連動して住宅ローンの金利も上がることになります。
一方、10年当初固定金利も、同様に住信SBIネット銀行を見てみると当初10年間は、基準金利2.74%から引き下げ-1.55%が適用されて1.19%が適用金利になります。11年目以降は自動的に変動金利になり、金利引き下げ幅は-1.2%が適用されて、仮に今と基準金利が変わらないとすれば、1.575%とが適用される金利となります。
10年当初固定金利よりも、変動金利の方が有利?
お気づきの通り、変動金利であれば、ずーっと-1.91%引き下げなのに対し、10年当初固定金利では、10年間-1.55%の引き下げ幅で、11年目以降は-1.2%です。単純に考えれば、これでは変動金利にしない理由が見当たりません。10年当初固定金利を選ぶ理由は、ただひとつ、はじめの10年間の間に基準金利が上がった場合のみ、変動金利よりも有利になるのです。
変動金利vs10年当初固定金利シミュレーション
住信SBIネット銀行 3000万円を35年で借入した場合 ※2013年6月時点金利
変動金利
変動 0.865% 基準金利 年-1.91%
10年当初固定金利
当初10年間 1.53% 基準金利 年-1.55%
11年目以降 2.38% 基準金利 年-0.7%
金利上昇なし
返済年 | 変動金利 | 10年当初固定金利 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
- | 基準金利 | 引下げ幅 | 適用金利 | 返済額 | 基準金利 | 引下げ幅 | 適用金利 | 返済額 |
1年目~5年目 | 2.78% | -1.91% | 0.865% | 4,968,660 | 3.08% 固定期間 | -1.55% | 1.53% | 5,537,760 |
6年目~10年目 | 2.78% | -1.91% | 0.865% | 4,968,660 | 3.08% 固定期間 | -1.55% | 1.53% | 5,537,760 |
11年目~25年目 | 2.78% | -1.91% | 0.865% | 24,843,300 | 3.08% | -0.70% | 2.38% | 30,426,000 |
総返済額 | - | - | - | 34,780,620 | - | - | - | 41,501,520 |
差額 | - | - | - | - | - | - | - | 6,720,900 |
6年目 1%上昇
返済年 | 変動金利 | 10年当初固定金利 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
- | 基準金利 | 引下げ幅 | 適用金利 | 返済額 | 基準金利 | 引下げ幅 | 適用金利 | 返済額 |
1年目~5年目 | 2.775% | -1.91% | 0.865% | 4,968,660 | 3.08% 固定期間 | -1.55% | 1.53% | 5,537,760 |
6年目~10年目 | 3.775% | -1.91% | 1.865% | 5,690,940 | 3.08% 固定期間 | -1.55% | 1.53% | 5,537,760 |
11年目~25年目 | 3.775% | -1.91% | 1.865% | 28,454,700 | 4.08% | -0.70% | 3.38% | 33,843,900 |
総返済額 | - | - | - | 39,114,300 | - | - | - | 44,919,420 |
差額 | - | - | - | - | - | - | - | 5,805,120 |
6年目 2%上昇
返済年 | 変動金利 | 10年当初固定金利 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
- | 基準金利 | 引下げ幅 | 適用金利 | 返済額 | 基準金利 | 引下げ幅 | 適用金利 | 返済額 |
1年目~5年目 | 2.775% | -1.91% | 0.865% | 4,968,660 | 3.08% 固定期間 | -1.55% | 1.53% | 5,537,760 |
6年目~10年目 | 4.775% | -1.91% | 2.865% | 6,472,860 | 3.08% 固定期間 | -1.55% | 1.53% | 5,537,760 |
11年目~25年目 | 4.775% | -1.91% | 2.865% | 32,364,300 | 5.08% | -0.70% | 4.38% | 37,469,400 |
総返済額 | - | - | - | 43,805,820 | - | - | - | 48,544,920 |
差額 | - | - | - | - | - | - | - | 4,739,100 |
どうでしょうか?差額がいっこうに縮まらないことに驚かれている方も多いでしょう。金利上昇によって、徐々に差額は縮まっているものの、金利が6年目に2%上昇したとしても、まだ470万円も返済額に開きがあります。
本来は、10年以内の金利上昇リスクに対応するためにあるといえる10年当初固定金利。実際は金利が上がればあがるほど、変動金利の方がお得になっていくのです。これは、11年目以降からは変動金利になるのに、金利引き下げ幅が変動金利タイプを採用する場合に比べて1.21%も違うからおきることであり、住信SBIネット銀行以外の銀行では違う結果になる場合もあります。
ほとんどの銀行の当初固定金利プランは、当初の優遇期間だけの金利を打ち出して、住宅ローンの申込につなげようとするため、優遇期間終了後の金利は小さく書いてあるのみ。これは、利用者から得でない金利プランというのは、銀行から見れば利益の大きい金利プランということなのです。変動金利で収益性が下がった銀行が打ち出した苦肉の策ともいえるでしょう。見た目のいい当初優遇金利にだまされずに、気になるようであれば自分で実際に試算をしてみましょう。