重要度が増している住宅ローン審査項目
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- カテゴリ: 住宅ローン審査
- 作者: 住宅ローン比較
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重要度が増している住宅ローン審査項目
住宅ローンの審査で重視される項目というのは、何年も同じものが続くわけではありません。社会情勢や政治、経済状況、住宅市場の動向や銀行の経営状況など様々な要素で変動しているものなのです。ここでは、2014年3月に発表された国土交通省の「民間住宅ローンの実態に関する調査」から重要度が高まっている審査項目について解説していきたいと思います。
2011年と2013年の審査項目の重要度の変化
重要度 | 審査項目 | 回答数 | 2013年 | 2011年 | 増減 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 完済時年齢 | 1262 | 99.1% | 99.3% | -0.2% |
2 | 借入時年齢 | 1241 | 97.5% | 97.5% | 0.0% |
3 | 返済負担率 | 1237 | 97.2% | 97.3% | -0.1% |
4 | 勤続年数 | 1229 | 96.5% | 96.0% | 0.5% |
5 | 年収 | 1225 | 96.2% | 95.8% | 0.4% |
6 | 担保評価 | 1225 | 96.2% | 95.0% | 1.3% |
7 | 健康状態 | 1207 | 94.8% | 90.5% | 4.8% |
8 | 融資可能額(融資率)①購入の場合 | 1174 | 92.2% | 92.4% | -0.2% |
9 | 融資可能額(融資率)②借換えの場合 | 1166 | 91.6% | 92.0% | -0.4% |
10 | 金融機関の営業エリア | 1155 | 90.7% | 88.1% | 3.0% |
11 | 連帯保証 | 1155 | 90.7% | 88.1% | 3.0% |
12 | カードローン等の他の債務の状況や返済履歴 | 1112 | 87.4% | 91.6% | -4.6% |
13 | 雇用形態 | 966 | 75.9% | 71.3% | 6.5% |
14 | 申込人との取引状況 | 790 | 62.1% | 65.1% | -4.6% |
15 | 国籍 | 760 | 59.7% | 54.9% | 8.7% |
16 | 業種 | 527 | 41.4% | 41.7% | -0.7% |
17 | 雇用先の規模 | 429 | 33.7% | 29.7% | 13.5% |
18 | 家族構成 | 362 | 28.4% | 27.3% | 4.0% |
19 | 所有資産 | 321 | 25.2% | 26.1% | -3.4% |
20 | 性別 | 255 | 20.0% | 20.9% | -4.3% |
21 | その他 | 134 | 10.5% | 11.7% | -10.3% |
出典:民間住宅ローンの実態に関する調査
調査主体:国土交通省
調査対象:住宅資金貸出の実績のある民間金融機関1386社
重要度が高まっている審査項目
1.雇用先の規模
雇用先の規模は住宅ローン審査には大きな影響はないと考えられていました。実際に2011年のアンケート結果では29.7%と重要度でいえば他の項目に対してかなり低い数字と言っていいでしょう。しかし、2013年度のアンケート調査では33.7%とわずかながら上昇しています。
2.雇用形態
雇用形態も2011年の71.3%から75.9%へ重要度が高まっています。
上記の2つの審査における重要度上昇の背景にあるのは、「低金利競争の激化」と「融資率の上昇」です。ここ2年間でも住宅ローン金利は低い水準を保ちながら、変動金利だけを見ても0.2%ほど下がっているのです。
銀行は金利水準を引き下げないと競争に勝てず住宅ローン利用者を獲得できない反面、金利が低くなれば銀行の利益が減ってしまうため、審査を厳しくする必要がある形になっているのです。担保評価額に対しての融資率の上昇も金利低下と同じく100%以上の頭金ゼロで融資する銀行が増えてきたため、横並びにしないと住宅ローンの利用者の獲得が難しくなり、低金利化と同様に貸し倒れリスクが上がっている状況になっているのです。
では、審査を厳しくして貸し倒れ(デフォルト)になるリスクを軽減するためにどうするのか?というと「収入の安定性」をより厳密にチェックしていこうということになるのです。
「収入の安定性」を判断するときに重要になるのが「勤務先企業の規模(安定度)」と「雇用形態(正社員、派遣社員、契約社員・・・)」なのです。企業規模が大きければ会社が倒産するリスクは少ないですし、退職したとしても転職がしやすいという状況があります。また、正社員であれば安定した収入が得られると判断されるからです。
その結果、「勤務先企業の規模(安定度)」と「雇用形態(正社員、派遣社員、契約社員・・・)」の審査における重要度が高まっているのです。
3.借入比率(借入額/担保評価額)
また、内訳をみてみると担保評価額に対してのローンの借入額の割合である借入比率(融資率)の割合でも変化があります。
借入比率 | 2013年 | 2011年 |
---|---|---|
①80%以内 | 29.2% | 24.2% |
②90%以内 | 1.5% | 2.4% |
③100%以内 | 51.0% | 55.9% |
④110%以内 | 3.0% | 2.9% |
⑤120%以内 | 1.4% | 1.2% |
⑥150%以内 | 0.5% | 0.7% |
⑦その他 | 13.5% | 12.6% |
2011年は80%以内と回答した割合が24.2%だったのに対して、2013年は29.2%と5ポイントも上昇しているのです。頭金ゼロでも借りられる住宅ローンという名目で借入比率100%の住宅ローンが増えている中、審査では逆に頭金をどれだけ用意できるのか?の重要度が増しているという結果になっています。
審査が緩くなっている項目
1.返済負担率
返済負担率の数値は上記の表で比較すると2011年97.3%、2013年97.2%とほぼ変化はありません。しかし、内訳をみてみると大きな違いがあることがわかります。
返済負担率 | 2013年 | 2011年 |
---|---|---|
①50%以内 | 0.5% | 1.2% |
②45%以内 | 47.3% | 6.0% |
③40%以内 | 10.2% | 23.8% |
④35%以内 | 18.5% | 28.6% |
⑤30%以内 | 9.3% | 17.9% |
⑥20%以内 | 2.9% | 13.1% |
⑦その他 | 11.2% | 9.5% |
2011年では返済負担率(収入に対してローン返済の割合)が35%以内という回答が一番多く全体の28.6%を占めていました。しかし、2013年では45%以内という回答が一番多く全体の47.3%を占める形に大きく変化しているのです。
これは長く続く不景気の影響で銀行の住宅ローンのターゲットも低年収の方が増えてきているということが挙げられます。その一方、頭金ゼロでの借り入れを可能にする住宅ローンが増え、ローン返済の割合というのが高まっているのです。
返済負担率の平均値は22%~23%なので、ほぼ倍の45%以内でも審査に通るということは、返済負担率に対する審査のハードルは非常に下がっているということを意味しています。
まとめ
この調査結果の比較からわかることは、住宅ローン審査の金利が低金利の状態が続いているため、審査は比較的厳しくなっていて、とくに収入の安定度の重要性が増しているということなのです。会社の規模、役職、職種、勤続年数など安定性の高い人の方が審査に通りやすい環境になっています。一方、返済負担率などは重要ではあるもののハードルは低くなっており、年収200万~300万円の方でも十分に審査に通る可能性は高まっているのです。住宅ローン審査に落ちたという場合は、頭金を多く用意することで審査に通る可能性が高まると言って良いでしょう。