住宅ローン収入合算の種類「連帯債務・連帯保証・ペアローン」の違いとは?
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- 作者: 住宅ローン比較
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住宅ローン収入合算の種類「連帯債務・連帯保証・ペアローン」の違いとは?
住宅ローンを利用するときに収入合算を検討している方も多いと思います。今回は収入合算の種類とその違いについて解説します。
住宅ローンの収入合算とは?
収入合算とは
夫の年収だけで住宅ローンを組むと借りられる金額が少ない場合に、妻の年収も合算して住宅ローンを組むことで借りられる金額を増やす住宅ローンの借入方法のことを言います。
銀行は「返済負担率」という指標で融資できる金額を決定します。
返済負担率 = ローンの返済額 / 年収
返済負担率の目安35%以下
ですから、分母である「年収」が大きければ大きいほど、借りられる金額が増えることになります。
※返済負担率は銀行が審査で採用している指標ですが、一般的にはわかりにくいため「年収倍率」という年収に対して○倍ぐらいなら借りられるという指標が使われることが多いようです。「年収倍率」は6倍前後が適性値です。
夫だけの収入で借りられる金額というのは、年収の6倍程度ですので、年収が300万円の方の場合は1800万円ほどしか借りられません。
妻の年収が同じ300万円であれば、収入合算をして600万円、その6倍の3600万円まで借りられる可能性があるのです。倍の金額が借りられれば、検討できる物件の幅も広がります。
収入合算の注意点
妻も返済責任を負う
「収入合算する」ということは、銀行側が「妻の収入も返済のあてにする」ということを意味しています。つまり、なんらかの形で妻も返済責任を負う必要があるのです。
夫のみの住宅ローンであれば、夫が返済できずに自己破産した場合などでも妻は関係がありませんが、収入合算の場合は、夫が自己破産した場合などは、妻が返済しなければならないのです。
離婚時にトラブルが発生しやすい
夫だけの契約で住宅ローンを組むのであれば、所有権も夫100%、返済責任も夫100%ですから、離婚した場合には財産分与の部分だけを考慮すれば良いのです。
しかし、収入合算の場合は、共有持分になるケースが増えてしまいます。物件は一つですので、分けようにも分けられないため、離婚時にトラブルに発展するケースも少なくありません。
収入合算の種類
収入合算には大きく分けて3つの種類があります。
- 連帯債務(フラット35)
- 連帯保証(民間銀行)
- ペアローン(民間銀行)
の3つです。個々の特徴を解説します。
1.連帯債務
連帯債務とは
連帯債務はフラット35で利用できる収入合算です。夫と同じように妻も、借入額の全額に対して返済責任を負う形の借入方法です。
ローン契約自体は一つですので、返済の負担割合は夫婦で自由に設定できます。
住宅ローン控除は持分割合に応じて、夫婦ともに利用することができるメリットがあります。団信に関しては、割引制度「デュエット」を使えば、本来2倍になる団信料が1.5倍程度に抑えられ、夫婦ともに団信に加入することができます。
フラット35を選ぶ場合の収入合算では「連帯債務」を利用することになります。
2.連帯保証
連帯保証とは
連帯保証は、夫の連帯保証人に妻がなることで、妻の収入分も合算して住宅ローンが組める借入方法のことです。
連帯保証人というのは、夫が返済ができなくなった場合に妻が代わりに返済しなければならないものです。
妻は債務者ではないため、住宅ローン控除を妻の収入に対して利用することはできません。同様に団信も夫にしか利用することができません。
住宅ローンの契約も一つです。
民間銀行を利用する際は、連帯保証とペアローンを選ぶことができますが、ペアローンの場合は契約が2本になるので諸費用が増えてしまいます。諸費用の負担増を避けたいと考える方で、民間銀行の住宅ローンを検討している方におすすめの収入合算方法です。
3.ペアローン
ペアローンとは
ペアローンは夫と妻がそれぞれ個別のローン契約を一つの物件に対して行い、住宅ローンを組む借入方法のことです。3000万円の物件を夫2000万円、妻1000万円と別々で契約し、結果的に収入合算をする方法です。
個別の住宅ローン契約が2本走るため、抵当権の設定費用、司法書士報酬などが2倍になります。
しかし、個別に住宅ローン契約をするので、夫や妻の借入額分は夫婦ともに住宅ローン控除、団信加入ができることになります。
民間銀行を利用することを検討している方で、妻が住宅ローン控除を利用する際の控除額が諸費用の増額分を超えることが想定される場合におすすめできる収入合算方法です。
連帯債務・連帯保証・ペアローンのメリットデメリット比較
収入合算の種類 | 収入合算なし | 連帯債務 | 連帯保証 | ペアローン | |
---|---|---|---|---|---|
取扱金融機関 | フラット35・民間 | フラット35 | 民間銀行 | 民間銀行 | |
名義 | 夫 | 夫婦共同 | 債務者のみ | 別々のローン | |
債務者 | 夫 | 夫・妻 | 夫 | 夫・妻 | |
返済責任 | 夫 | 債務者 | 債務者(主たる債務者) | 債務者 | 債務者かつ妻の連帯保証人 |
妻 | - | 債務者(連帯) ※同じ返済責任を負う | 連帯保証人 ※債務者が返済できない場合に返済責任を負う | 債務者かつ夫の連帯保証人 | |
住宅ローン控除 | 夫 | ○ | ○(持分割合) | ○ | ○(夫借入額分) |
妻 | × | ○(持分割合) | × | ○(妻借入額分) | |
団信 | 夫 | ○ | ○ | ○ | ○(夫借入額分) |
妻 | × | △一部可能な商品あり | × | ○(妻借入額分) | |
所有権 | 夫 | ○ | ○ | ○ | ○ |
妻 | × | ○ | × | ○ | |
諸費用 | - | 1つ | 1つ | 2つのローン分発生 | |
メリット | ・返済の責任は夫のみ。妻は関係なし | ・収入合算ができること ・住宅ローン控除が夫婦ともに利用できること ・団信も特約料がやや増えるが夫婦ともに利用できること ・ペアローンと違って契約は一つなので諸費用負担は変わらない | ・収入合算ができること ・妻は債務者にならずに済む。連帯債務よりは返済義務が軽い ・ペアローンと違って契約は一つなので諸費用負担は変わらない | ・収入合算ができること ・住宅ローン控除が夫婦ともに利用できること ・団信が夫婦ともに利用できる。かつ民間銀行であれば団信料が無料 ・違う金利タイプの住宅ローンを組み合わせられる | |
デメリット | ・夫の収入分の借入しかできない。 ・住宅ローン控除も夫の収入のみ ・団信も夫のみ | ・取り扱っているのがフラット35のみ。民間銀行はほぼ取扱せず ・夫婦ともに返済義務が発生すること | ・住宅ローン控除の対象は夫のみ ・団信の対象は夫のみ | ・抵当権の設定費用、司法書士報酬などが2倍必要になる |
まとめ
共働き世帯で、世帯主の収入だけでは購入できる物件の選択肢が少ない場合に収入合算は有効な方法となります。ただし、収入合算にはデメリットもあるため、慎重に検討する必要があります。