日銀の長期金利ターゲットの住宅ローンへの影響とは?
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日銀の長期金利ターゲットの住宅ローンへの影響とは?
日銀が長期金利ターゲットを導入することを決定しました。長期金利ターゲットとは何なのか?長期金利ターゲットの住宅ローン金利への影響について解説します。
日銀の長期金利ターゲットが導入された背景
日銀はここ2年~3年ほど「国債買入れ(量的緩和)」を金融政策のひとつとして重点的に行ってきました。
狙いは物価2.0%の上昇 = インフレターゲット
です。
国債を日銀が買うと、なぜ物価が上がるの?
あくまでも日銀の目論見ですが、国債買入れの量的緩和はいくつかの流れで物価上昇が見込めます。
物価上昇の日銀目論見:ケース1
国債を日銀が買う = 買い手が増える = 価格が上がる = 金利が下がる
↓
国債を保有していた機関投資家(銀行、保険会社、年金基金)にお金が流れる
↓
市場にお金が増える(通貨供給量が増える)
↓
通貨の供給量が増えればインフレになるので物価が上がる
物価上昇の日銀目論見:ケース2
国債を日銀が買う
↓
市場にお金が増える(通貨供給量が増える)
↓
世界の通貨から見ると日本円の量が増えれば価値が下がるので相対的に円安になる
↓
輸出企業が儲かる
↓
株価が上昇する
↓
大企業を中心に企業の収益が上がる
↓
従業員の給料が上がる
↓
消費が活性化する
↓
物価を上げても売れる状態になる
結果
上記のような考え方で不況時の金融政策を行うのは、世界的にもセオリーなので、日銀の判断が間違っていたわけではありません。
実際に株価の上昇までは起きているのです。
しかし、日銀の黒田総裁が2年以内に物価上昇率2.0%と目標を掲げてから、2年を経過しても以前として物価が上昇していないのです。
9月21日の金融政策決定会合では、今の金融政策が失敗した理由と、それに対する対策が決定されたのです。
金融政策が失敗した理由
日銀の総括的検証によると
- 原油価格の下落
- 新興国経済の減速(世界経済の不安定さ)
- 消費税増税
が物価上昇が達成していない理由としています。
原油価格の下落、新興国経済の減速(世界経済の不安定さ)
原油価格の下落や中国経済の減速などは、海外の投資家から見ても世界経済全体が不安定になっていることを示すサインと言えます。
世界的に経済状況が悪化すると、決まって買われるのが日本円、日本国債、金・プラチナなのです。
日本人から見るとわかりませんが、海外の投資家から見ると日本の通貨への新来は依然として高いようです。また、すでに有事の円買いが海外の投資家に定着してしまっているため、有事に円を買っておけば、さらに円高が進み、利益が出ると思われている節もあります。
結果、世界経済が悪化すれば、日銀がどんなに円安誘導をしようとしても円高が進んでしまうのです。
日本の金融政策は世界経済の動向の前には、何の意味もなかったことにされてしまうということです。
消費税増税
「当たり前だろ。」と思いますが、消費税を増税すれば消費マインドが冷え込み、消費が落ちます。
安倍政権の意向を受けて
- 給料を上げた
- 商品の価格を上げた
大企業はそれなりにありましたが・・・
商品の価格を上げた企業ほど、減収減益になってしまい、窮地に立たされてしまっているのです。結果として、マクドナルドや牛丼チェーン店などデフレの象徴する企業が。以前の低価格路線に舵を切りなおしているのです。
物価の上昇も限定的になってしまったのです。
日銀の置かれている苦しい状況
「国債買入れは辞められない」
国債買入れを辞めてしまうと、円安誘導と株高を作り上げていたものが崩れてしまいます。投資家は日本株を売る動きになり、円高株安が進んでしまうからです。
国債買入れは辞めたくても辞められないのです。しかも、辞めるそぶりすら出せないというのが日銀の状況です。
マイナス金利の導入による銀行収益の悪化と反発
日銀がマイナス金利を導入したことで、日銀に巨額の預金をしている銀行は預金したらお金が減っていく状況になってしまいました。
当然、メガバンクや地方銀行の収益は大幅に下がってしまったのです。
日銀はメガバンクや地方銀行が日銀に預けていた預金分の資金を企業の融資に回してほしかったのですが、企業側も設備投資に消極的であり、融資先がない状態が続いているのです。
メガバンクや地方銀行は日銀のマイナス金利の導入に反発しているのです。
今回の金融政策決定会合でも「マイナス金利を拡大する」可能性も言及されていたのですが、見送られたことを考えても、日銀がメガバンクや地方銀行の反発を無視できないことが露呈されてしまったのです。
長期金利ターゲットの導入
この状況化で長期金利ターゲットの導入が発表されました。
長期金利ターゲットとは
10年もの国債金利(長期金利)を0.0%になるように国債買入れをする
という趣旨のものです。
今までは、7年~12年の償却期間の国債を日銀は平均的に購入していたのですが
- 短期の国債を買う量を増やす
- 長期の国債を買う量を減らす
ことで、10年もの国債金利(長期金利)は「マイナス金利にならないように国債の買う量を調整する」ということです。
長期金利ターゲット導入のメリット
短期の国債を買う量を増やす → 短期金利のさらなる低下
短期の国債を買う量を増やすということは、短期の国債金利は今以上に低下します。
銀行の企業への短期の融資金利は今よりも低金利になることで、企業への融資の増加、企業が借入がしやすい状態になることが予測されます。
企業の資金調達がしやすくなれば、投資につながり、消費が増加する可能性があるのです。
長期の国債を買う量を減らす → 長期金利はプラスになる
長期金利を0%に調整するのが、長期金利ターゲットですから、思惑通りに調整できれば国債金利は0%になります。
10年以上の国債金利がプラスになるのであれば、銀行や保険会社、年金基金などの巨額資金の運用が安心してできる状態になるのです。
日銀にとってはマイナス金利の導入による銀行収益の悪化の影響を最小限に抑えることができるのです。
国債買入れの総量は変えない
- 短期の国債を買う量を増やす
- 長期の国債を買う量を減らす
ことで、全体の量は今まで通りの80兆円を維持すると発表されています。
投資家に対して「金融緩和は辞めませんよ。今まで通りですよ。」と言い続けることができるのです。
長期金利ターゲット導入の住宅ローン金利への影響
短期の国債を買う量を増やす
↓
国債短期金利の低下
↓
変動金利、当初2年、3年、5年固定金利の低下
長期の国債を買う量を減らす↓
国債長期金利の上昇
↓
当初10年固定金利、それ以上の長期固定金利の上昇
という結果になります。
2016年9月の適用金利は8月の10年もの国債金利をベースにしていますから
8月時の10年もの国債金利 -0.1%
だと考えると、今よりも当初10年固定金利、それ以上の長期固定金利は0.1%上昇することが予測されます。
住宅ローン選びに与える影響は、どう判断すべき?
住宅ローン選びで「長期金利ターゲット導入」を過度に意識する必要はない!
確かに
- 変動金利、当初2年、3年、5年固定金利の低下
- 当初10年固定金利、それ以上の長期固定金利の上昇
という影響は出てくると思います。
しかし、現時点でも10年もの国債金利は-0.1%と6月、7月の-0.4%と比較すれば0.0%の水準に近付いているのです。
0.0%の「長期金利ターゲット」と言っても、それほど影響が出ない可能性が高いのです。
「長期金利ターゲットだから、当初10年固定金利ではなく、変動金利にしよう。」と考えるものではなく、
金利タイプを選ぶのは「金利上昇リスク」と「将来の返済計画」の両面から検討すべきなのです。
低所得の方ほど、金利上昇時に返済ができなくなるので、そのリスクを取らないためにも長期固定金利を選ぶべきですし、変動金利や短期の固定金利を選ぶ方も、金利上昇リスクを最小限にするために繰り上げ返済を活用すべきなのです。
「長期金利ターゲット」が導入されたからと言って、住宅ローン選びに大きな影響があると考えてはいけないのです。